毎月、税理士や担当者から試算表を受け取る。

パラパラとめくって、「利益が出ているな」「売上は先月より増えたな」と確認する。でも、それ以上何をどう見ればいいかわからない。

これは、決して珍しいことではありません。試算表は「数字の羅列」に見えて、読み方のコツをつかむまでは、本当に何も伝わってこないものです。

この記事では、試算表の読み方を基礎から説明するのではなく、「経営判断に直結する3つの数字」だけに絞って整理します。


そもそも試算表は「2つの表」でできている

試算表を開くと、大きく2種類の情報が並んでいます。

損益計算書(P/L)部分と、貸借対照表(B/S)部分です。

多くの経営者は、このどちらを見ているのかを意識しないまま、ページをめくっています。それが「見たけど何もわからなかった」の正体です。

  • 損益計算書(P/L) → 「この期間、いくら儲かったか」を表す
  • 貸借対照表(B/S) → 「今この瞬間、会社にいくら残っているか」を表す

この2つは、全く別のことを言っています。まずここを分けて理解することが、試算表を読む出発点です。


最初に確認すべき3つの数字

1. 売上総利益(粗利)

損益計算書の上から2番目に出てくる数字です。

売上高 − 売上原価 = 売上総利益(粗利)

粗利は「本業で稼いだ一番素直な利益」です。ここがマイナスなら、売れば売るほど損をしている状態です。

経営者が見るべきポイント:

  • 粗利の絶対額が、月ごとにどう変わっているか
  • 粗利率(粗利 ÷ 売上)が、前の月・前の年と比べてどうか

粗利率が下がっているときは、値引きが増えているか、原材料費や外注費が上がっているか、どちらかです。「売上は増えているのに、手元が楽にならない」という感覚の多くは、粗利率の低下が原因です。


2. 営業利益

損益計算書のP/Lでは、粗利から「販売費および一般管理費(販管費)」を引いたものが営業利益です。

売上総利益(粗利) − 販管費 = 営業利益

販管費とは、人件費・家賃・広告費・交通費など、事業を運営するためにかかる費用の総称です。

経営者が見るべきポイント:

  • 営業利益がプラスかどうか(本業の稼ぎで、運営費を賄えているか)
  • 粗利は増えているのに営業利益が減っている場合、どの費用が膨らんでいるか

「売上は増えているのに利益が出ない」という場合、粗利率と販管費の両方を見ると、どちらが問題かが見えてきます。


3. 現預金残高(貸借対照表から)

これだけは、損益計算書ではなく**貸借対照表(B/S)の「資産の部」**に出てきます。

現金 + 普通預金 + 定期預金 = 現預金残高

P/Lがどれだけ良くても、現預金残高が減り続けているなら、会社の「体力」は落ちています。逆に、P/Lで赤字が出ていても、現預金が十分にあれば、すぐには経営危機にはなりません。

経営者が見るべきポイント:

  • 月末残高が、前月と比べて増えているか減っているか
  • 過去3〜6か月のトレンドで、緩やかに減っていないか

現預金は「会社の体温」です。利益が出ているかどうかよりも、現預金残高のトレンドの方が、経営の安全度を直接的に表しています。


3つの数字の「つながり」を見る

この3つを、バラバラに見てもあまり意味がありません。大切なのは組み合わせて読むことです。

粗利営業利益現預金何が起きているか
↑増加↑増加↑増加理想。本業が健全に回っている
↑増加↓減少販管費が膨らんでいる。どの費用か特定する
↓減少↓減少粗利構造の問題。値引きか、原価上昇か
↑増加↑増加↓減少売掛金が増えている、または借入返済が重い
↓減少↓減少↓減少要注意。優先して整理が必要

現預金が減っているのに、P/Lの利益は出ている、というケースは特に多い。この場合は「売掛金の回収が遅い」「借入返済が大きい」「在庫が増えている」のどれかが原因です。


よくある「誤読」のパターン

「利益が出ているから大丈夫」

損益計算書の利益だけを見て安心するパターン。現預金残高が月々減っていれば、いずれ資金繰りが苦しくなります。

「売上が増えているから順調」

売上の増加と利益の増加は、必ずしも連動しません。売上が伸びていても粗利率が下がっていれば、忙しいだけで手元が増えない状態に陥ります。

「先月より利益が出た」

単月の比較だけでは傾向が見えません。前年同月・前3か月の平均と比べることで、季節変動と実力値を分けて見ることができます。


「3つの数字を見てみたが、何かおかしい」と感じたら

数字を確認して、「何かがずれているような気がするが、原因まではわからない」という状態になることがあります。

その感覚は、正しい反応です。

試算表の数字は、「事実の記録」ですが、「何が問題か」「どこから手をつけるか」は、別の問いです。財務健康診断では、試算表や決算書をもとに、今の数字の構造を整理し、優先して見るべき論点をお伝えしています。

「数字は見ているけれど、経営判断に使えていない」と感じている方は、まずご相談ください。

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