「最近、銀行の担当者の態度が変わった気がする」

そう感じたとき、すでに銀行側の社内評価が変化している可能性があります。銀行は融資先の財務状況を定期的に確認し、返済リスクの変化を評価しています。

経営者として知っておくべきことは、「銀行がどういう数字を見ているか」です。危険な状態になってから銀行との関係が悪化するのではなく、事前に自社の状態を把握しておくことで、手を打つタイミングを早めることができます。

この記事では、銀行が融資先の評価を下げるきっかけになりやすい財務指標のパターンを整理します。


銀行はどのように融資先を評価しているか

銀行は融資先企業を「債務者区分」という形で分類しています。大まかには以下のような区分があります。

  • 正常先:業績が良好で、返済能力に問題がない
  • 要注意先:業績が低調、または財務内容に問題がある
  • 要管理先:3ヶ月以上の返済延滞、または経営改善計画が必要な状態
  • 破綻懸念先:経営破綻の可能性が高い
  • 実質破綻先・破綻先:事実上または法律上の破綻状態

融資先が「正常先」から「要注意先」に区分変更されると、銀行側の対応が変わります。追加融資に慎重になる、担当者からの連絡頻度が上がる、財務資料の提出を求められるといった変化が起きます。

この区分変更のきっかけになりやすい財務指標を知っておくことが、今回の記事の目的です。


銀行が警戒する財務指標の7つのパターン

1. 債務超過になっている、または近づいている

債務超過とは、貸借対照表(BS)において負債が資産を上回っている状態です。純資産がマイナスになっている状態とも言えます。

純資産 = 総資産 − 総負債

純資産がマイナス = 債務超過

債務超過は、銀行が最も警戒するシグナルのひとつです。万が一会社が清算された場合、資産を売却しても借金を返しきれない状態を意味するからです。

債務超過になっていなくても、純資産が毎期減少している(赤字が続いている)会社は、債務超過に近づいていると判断され、評価が下がります。

自社での確認方法

決算書のBSで、純資産の合計をチェックします。プラスであれば債務超過ではありませんが、毎年の変化を確認することが重要です。

2. 3期連続の赤字

1期の赤字は「一時的な要因」として説明がつく場合があります。しかし3期連続で赤字が続くと、構造的な問題があると判断されます。

銀行は複数期の決算書を比較して、業績のトレンドを確認します。赤字が続いているという事実よりも、「改善に向かっているか、悪化し続けているか」のトレンドが重要です。

赤字でも「売上は増えている」「粗利率は回復している」「固定費削減が進んでいる」といった改善の兆候があれば、銀行の評価は変わります。問題は「改善の見通しが見えない赤字」です。

3. 借入過多(過剰債務)

借入の総額が適正水準を超えている状態を、銀行は「過剰債務」と判断します。

借入の適正水準を測るための代表的な指標が債務償還年数です。

債務償還年数 = 有利子負債 ÷ (税引後当期純利益 + 減価償却費)

これは「今の利益水準で借入を全額返すのに何年かかるか」を示します。一般的に10年以内が正常の目安とされますが、業種によって異なります。

15年・20年を超えてくると、銀行は「このままでは返済が難しい」と判断し始めます。

キャッシュフロー対有利子負債比率とも呼ばれるこの指標は、銀行の内部評価で頻繁に使われます。

4. 営業キャッシュフローがマイナス

損益計算書(PL)では利益が出ていても、営業キャッシュフロー(営業CF)がマイナスの場合、銀行は注意を払います。

営業CFは「本業で現金を稼げているか」を示す指標です。これがマイナスということは、事業活動で現金が流出している状態であり、借入や資産売却で現金を補っている可能性があります。

営業CF がマイナスの状態が続く
→ 現金を外部から補い続けなければ事業を維持できない
→ 借入返済能力に疑問が生じる

1期のマイナスは一時的な要因として説明できる場合がありますが、2〜3期連続でマイナスが続くと、構造的な問題と判断されます。

5. 売上高経常利益率の著しい低下

売上高経常利益率は、売上に対してどのくらいの利益が残るかを示す指標です。

売上高経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100(%)

この数字が業種平均と比べて著しく低い、あるいは年々低下傾向にある場合、収益性の悪化として評価されます。

業種によって平均的な水準は異なりますが、製造業・建設業・サービス業それぞれの業界平均と比較して大きく下回っている状態は、銀行が注目するポイントです。

6. 売掛金・棚卸資産の異常な増加

売掛金や棚卸資産が売上の伸びを大きく上回るペースで増加している場合、銀行は以下のような懸念を持ちます。

売掛金の異常な増加が示すリスク

  • 取引先の支払い遅延が増えている
  • 回収不能な売掛金が積み上がっている
  • 実態のない売上(架空売上)が計上されている

棚卸資産の異常な増加が示すリスク

  • 売れない在庫が積み上がっている
  • 評価損が発生する可能性がある
  • 現金化できない資産が増えている

売掛金の回収日数(売掛金 ÷ 月商 × 30)が長期化している場合、銀行は回収リスクを懸念します。

7. 自己資本比率の低下

自己資本比率は、総資産に対する純資産(自己資本)の割合です。

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100(%)

この数字が低いほど、借入に依存した財務構造であることを示します。

一般的に自己資本比率が20〜30%以上あれば比較的安定とされますが、業種や規模によって異なります。

問題なのは自己資本比率の絶対値だけでなく、低下トレンドです。毎期赤字が続いて純資産が減少し、自己資本比率が下がり続けている状態は、銀行が継続的に注視します。


銀行担当者が特に注目する「変化のシグナル」

財務指標の絶対値だけでなく、前期比での変化を銀行は重視します。

以下のような変化が起きたとき、銀行の担当者は追加情報の収集や内部での検討を始めることがあります。

注意が高まる変化の例

  • 売上が前期比で20〜30%以上減少した
  • 利益が前期比で大幅に悪化した(黒字から赤字に転落など)
  • 手元の現金・預金が急減した
  • 新たな大口借入が発生した
  • 主要取引先が変わった、または主要顧客を失った
  • 代表者や主要役員が交代した

これらの変化が決算書に表れる前に、銀行担当者との日常的なコミュニケーションで状況を説明しておくことが、関係維持の観点から重要です。


評価が下がる前に取れる対策

銀行の評価が下がってから対応しようとしても、選択肢が狭まっています。評価が下がる前に、以下の点を意識した財務管理を行うことが有効です。

月次の試算表・資金繰り表を整備する

財務状況を正確に把握していることを銀行に示せる状態が重要です。「聞かれたら出せる」ではなく、常に整備されている状態を維持します。

業績悪化の説明を先手で行う

業績が悪化した場合、銀行から問い合わせが来る前に担当者に状況を説明することが、信頼維持の観点で効果的です。「なぜ悪化したか」「どう対処するか」を自分の言葉で説明できる状態にしておきます。

改善計画を数字で示す

業績が悪化している場合、「改善する」という意思表示だけでなく、「いつまでに、どの指標を、どうやって改善するか」を数字で示せると、銀行の評価は変わります。

余裕があるときに借りる

資金が必要になってから借りようとすると、財務状態が悪化した状態での申し込みになります。業績が安定している時期に、将来必要になる分を先に調達しておくことが、長期的な資金調達を安定させる方法です。


自社の財務状態を先に把握しておく

銀行が「危ない」と判断する前に、経営者自身が自社の財務状態を把握しておくことが重要です。

債務償還年数・自己資本比率・営業キャッシュフロー——これらは難しい計算ではなく、決算書があれば計算できます。自社の数字が業種平均や銀行の目安と比べてどういう状態にあるかを定期的に確認することが、早期対応を可能にします。

銀行との関係や融資に向けた財務の整え方については、銀行向け事業計画からご相談ください。

銀行向け事業計画について詳しく見る