事業計画書を提出した後、銀行の担当者が何をどの順番で確認しているか——これを意識している経営者は、あまり多くありません。
「書くべき項目を埋めた」「売上計画を入れた」「フォーマット通りにまとめた」。そこで完成と思っている計画書の多くは、担当者に最初の数分で「読みにくい」と判断されています。
この記事では、銀行担当者の視点から、事業計画書がどのように読まれるかを整理します。
担当者が最初に確認すること
銀行の融資担当者が事業計画書を受け取ったとき、最初にすることは「全部を読む」ではありません。
まず冒頭の数ページで、次の3点を確認します。
- この会社は今、どういう状態か(現状)
- この資金を何に使うのか(使途)
- 返せる根拠はあるか(返済余力)
この3点が、冒頭から順番通りに整理されている計画書は「読みやすい」と判断されます。逆に、この3点が別々のページに散らばっていたり、読む前から探さなければわからない構成になっていると、担当者の印象は最初の段階で下がります。
なぜ「現状」が最初に来なければならないか
融資担当者にとって、事業計画は「将来の話」です。しかし将来を信頼するためには、「現状が正確に把握されているか」を先に確認しなければなりません。
現状の説明なしに「来年は売上が1.3倍になります」と書いてあっても、根拠が見えません。担当者は「今の売上はいくらで、どういう業況で、どこに課題があるのか」を知りたいのです。
現状説明でよく不足しているポイント:
- 直近3期の推移が書かれていない(直近1期だけでは傾向が見えない)
- 利益だけ書いてある(現金の状況・借入残高・返済状況が抜けている)
- 良い数字だけ並べている(課題や変化の理由に触れていない)
「現状の課題も含めて正直に整理されている」計画書の方が、担当者の信頼を得やすい。隠そうとすると、かえって詳細の説明を求められます。
「使途」で見られていること
資金の使途は、金額と用途を書くだけでは不十分です。担当者が確認しているのは次の2点です。
① 使途と現状課題がつながっているか
「設備を増強する」という使途は、「今の設備では対応できない需要がある」という現状とセットで初めて意味を持ちます。使途が現状から切り離されて書かれていると、「なぜこの投資が必要なのか」が伝わりません。
② 使途が具体的か
「運転資金として」「事業拡大のため」という曖昧な使途は、審査の場で必ず詳細を聞かれます。具体的に何に、いつ、いくら使うかを書いておく方が、担当者の手間を省き、信頼性も上がります。
「返済余力」で担当者が数字を追う順番
返済余力のチェックは、計画書の数字から担当者が自分で計算します。確認される主な数字と、その見られ方を整理します。
営業キャッシュフロー(または簡易CF)
経常利益に減価償却費を加えた数字を、年間の返済額と比較します。「この利益水準で、毎月の返済が賄えるか」を確認しています。
借入残高と返済年数
現在の借入残高を、年間キャッシュフローで割った年数(債務償還年数)が10年を超えると、追加融資の判断が厳しくなります。
自己資本の厚み
財務の安定性を見る指標です。自己資本が薄い場合、担当者は「なぜ薄いのか」「改善の見通しがあるか」を確認します。
これらの数字が計画書の中で自然に出てくる構成になっていると、担当者が自分で探す手間が省けます。「この会社は数字を把握して計画を立てている」という印象にもつながります。
担当者が「読みにくい」と感じる計画書の共通点
どれだけ内容が良くても、読みにくい構成では正当に評価されにくい。よくあるパターンを整理します。
現状・使途・返済余力がバラバラのページにある
ページをめくりながら情報を拾い集めなければならない構成は、担当者の読む意欲を下げます。最初の3〜5ページで3点が揃っている構成が理想です。
数字の出典が不明瞭
「売上は来期1億円を見込む」と書いてあっても、その根拠となる受注見込みや市場規模の説明がない。担当者は必ず根拠を確認するため、初めから書いておく方が面談がスムーズです。
文章が多すぎる
担当者は複数の案件を並行して扱っています。文章で説明するより、数字・図・箇条書きで要点が見えるページの方が、評価のスピードが上がります。
「書く前に読まれ方を設計する」という考え方
事業計画書の作成は「書くべき内容を埋める作業」ではありません。「担当者がどの順番で何を確認するか」を先に設計してから、その順番に沿って情報を並べる作業です。
銀行対話準備支援では、現状・使途・返済余力の3点を銀行が読む順番に整理した計画整理ドキュメントを作成しています。「何を書けばいいかわからない」「計画書はあるが弱い気がする」という段階からご相談いただけます。