「資金繰り表を作りたいけれど、どこから始めればいいかわからない」
そう感じている経営者は多いです。Excelで作ろうとして、列が増えていくうちに途中で止まってしまう。テンプレートをダウンロードしたが、どの数字を入れるのかわからない。
この記事では、資金繰り表の構造を最小限で整理したうえで、「まず使える状態にするための最初の一枚」の作り方を説明します。
資金繰り表は「残高の動き」を追う表
試算表(P/L)は「いくら儲かったか」を記録します。 資金繰り表は「現金がいつ、いくら増えて、いくら減ったか」を記録します。
この2つは、見ているものが根本的に違います。
なぜ試算表だけでは足りないか
試算表で利益が出ていても、現金が手元にない状態は起きます。売掛金の回収が遅れていれば、利益は計上されても現金は来ていない。借入の返済は費用にならないが、現金は確実に減る。
試算表は「過去の成績」を示します。資金繰り表は「現金の今と近い未来」を示します。経営者が日々の判断に使うなら、資金繰り表の方が直接的に役立ちます。
資金繰り表の基本構造
複雑にする必要はありません。最初は以下の4行で考えます。
月初残高
+ その月の収入合計
- その月の支出合計
= 月末残高(=翌月の月初残高)
これだけです。この構造が骨格になります。
収入の主な項目
- 売上の入金(売掛金の回収)
- 前受金・手付金
- 借入金の入金
- その他の収入
支出の主な項目
- 仕入れ・外注費の支払い
- 人件費(給与・社会保険)
- 家賃・光熱費・通信費
- 借入の返済
- 税金の支払い(消費税・法人税等)
最初から全項目を細かく分ける必要はありません。まず「収入合計」と「支出合計」だけで始め、後から項目を増やしていく方が挫折しにくい。
最初の一枚の作り方:過去3か月から始める
「来月以降の予測を立てる」と考えると、途端に難しくなります。まず過去の実績を記録することから始めます。
ステップ1:通帳を3か月分用意する
普通預金の通帳(またはネットバンクの明細)を、直近3か月分手元に置きます。
ステップ2:月ごとの「収入合計」と「支出合計」を出す
入金の合計と出金の合計を、月ごとに電卓で集計します。細かく分類しなくていい。まず「月に何円入って、何円出たか」だけを捉えます。
ステップ3:月末残高を確認する
通帳の月末日の残高をそのまま記入します。ステップ2で計算した「月初残高+収入-支出」と一致していれば、記録が正確です。ズレる場合は、記録漏れの項目があります。
ステップ4:3か月を並べる
3か月分の実績が並んだとき、次のことが見えてきます。
- 毎月の月末残高が増えているか、減っているか
- 特定の月に支出が偏っていないか
- 残高が最も少なくなる月はいつか
この3点が見えるだけで、「いつ資金が薄くなるか」の感覚が生まれます。
よくある2つの間違い
間違い1:最初から詳細項目を作りすぎる
20行以上の項目を最初から作ろうとすると、ほぼ必ず途中で止まります。まず「収入・支出・残高」だけで動かし、必要に応じて項目を足す順番が正しい。
間違い2:予測だけを作ろうとする
予測を立てるためには、まず実績の傾向が必要です。過去3か月の実績がなければ、来月の入金を何の根拠で予測するか決まりません。実績の記録が先、予測はその後です。
作れたあと、何を見るか
資金繰り表が形になったら、毎月確認すべきことは3点です。
1. 月末残高が増えているか減っているか
残高が月を追うごとに減っている場合、どこかで収入より支出が多い月が続いています。早めに原因を特定する必要があります。
2. 支出の中で「固定」と「変動」を分ける
毎月必ず出ていく費用(家賃・人件費・返済)と、業況によって変わる費用(仕入れ・外注・広告)を分けて見ると、どこを調整すれば残高を守れるかが見えてきます。
3. 大きな支払いが集中する月を先に把握する
消費税の納付・法人税・設備の支払いなど、特定の月に大きな支出が集中することがあります。その月に向けて残高を手当てできているかを、2〜3か月前から確認しておくことが重要です。
「作れたけれど、何がおかしいかわからない」という状態
資金繰り表が形になっても、「これが正しいのか」「この数字から何を判断すべきか」が見えにくい場合があります。
- 残高は毎月減っているが、なぜ減っているかわからない
- 売掛金の回収が遅れているのはわかるが、どう整理すれば改善できるか見えない
- 資金繰り表は作ったが、次に何をすべきか判断できない
こうした状態は、数字の記録ができていても「構造の整理」が済んでいないことから起きます。
資金繰り診断では、作成済みの表や通帳明細をもとに、現金がどこで詰まっているかを構造で整理し、優先して手を打つべきポイントをお伝えしています。